モンスターハンターワイルズの仕様からわかる、カプコンの努力
会社のブログでゲームのことを書いていいのか小一時間悩みましたが、これは文字にして記録しておかねばならないと判断したので書きます。
モンスターハンター。通称「モンハン」。改めて説明するのもおこがましいような気がしますが、どのようなゲームかと問われたら「でっかいモンスターをみんなで(たまに一人で)ワチャワチャしながら協力して倒すゲーム」です。
このゲームはPS2からあり、PSP、ニンテンドー各種ハードを渡り歩き、現在はPS5で最新作が発売されました。今回のモンスターハンターワイルズは歴代最大売上を叩き出す勢いで売れてます。ゲームの単価としても歴代最高ですが、それでも売れています。発売3日で800万本。ヤバい。会社のブログでこんな言葉を使いたくありませんが「ヤバい」。フルプライスのゲームが3日で800万本売れてる。ヤバい。
2025年、生成AI全盛期。どんなに生成AIが進化してもこのゲームがなぜこんなに売れたのかはきっと言語化できないだろう。できないことを祈りつつ、ためしにgenspaで検索してみます。
モンスターハンターワイルズの大ヒット理由
「モンスターハンターワイルズ」は、2025年2月28日に発売され、発売からたった3日間で800万本を販売するという驚異的な記録を達成しました。この成功にはいくつかの要因があります。
1. 豪華なグラフィックと新しい要素
一つ目の要因は、ゲームのグラフィックとゲームプレイの進化です。プレイヤーは「豪華なグラフィックのモンハン」を期待しており、「ワイルズ」は前作「モンスターハンター:ワールド」の路線を正統に進化させた作品です。この美麗なビジュアルは多くのファンに好評で、ベータテストでも高評価を得るなど、注目を集めました12。
2. グローバルなブランド力
次に、モンスターハンターシリーズは、カプコンが映画やイベントなど様々なメディアに展開したことで、広範なブランディングを持っています。「モンスターハンターライズ」など過去のタイトルの成功も影響し、新作への期待感が高まっていました12。
3. マルチプレイ機能の強化
「ワイルズ」は、マルチプレイ機能が充実しており、最大4人での協力プレイが可能です。これにより、友人と一緒に楽しむ機会が増え、多くのユーザーが参入しやすくなりました。特に海外市場において、オンラインでのプレイが成長する中で、ネットワークの強化が大きな要因です2。
4. 価格戦略と配信モデル
発売初期からの価格誘引や、過去作の歓迎された値引き戦略が新規ユーザーを引き込む要因として挙げられています。これにより、プレイヤーが「モンハン」シリーズを体験する際の敷居が低くなり、多くが購入する結果となりました24。
5. SNSや口コミの影響
また、ソーシャルメディアや口コミによるプロモーション効果も無視できません。ゲームプレイの動画がSNSで拡散されることで、新たなプレイヤーが興味を示し、購入に至るケースが多いというのも最近の傾向です45。
これらの要因が重なり合い、「モンスターハンターワイルズ」はカプコン史上最速の800万本販売を達成するという記録を打ち立てました。
6. テクノロジーの進化
新作の「ワイルズ」は、カプコンが自社開発した「RE ENGINE」により、高品質なグラフィック表現を実現しています。このテクノロジーは、ゲーム内のモンスターや環境のダイナミックな変化を可能にし、プレイヤーに実際の狩猟体験を提供します。さらに、プラットフォームを超えたクロスプレイ機能も実装されており、ユーザー同士のプレイ環境が大幅に向上しています13.
7. 世界での受容性
「モンスターハンター:ワールド」の成功以来、欧米市場でもの人気が高まり、特にネットワークを利用したプレイの強化が重要な要素とされています。こうした背景も、「ワイルズ」が広く受け入れられる要因となっています。累計販売数やプレイヤーのアクティブ度を考慮することで、今後も長期的な成功が期待されると言われています24.
8. コミュニティの活性化
新作発売の前後には、様々なイベントを通じて地域コミュニティやファンが盛り上がったことも大きな要因です。プレイヤー同士のつながりや、交流が活発になったことで、口コミが広まりやすくなりました。このように、ファンの間での連帯感が、ゲームへの関心をさらに高める結果に繋がっています34.
良かった。そこそこの出力がでてきました。学校の放課後に発表するレベルの濃さがでてきました。もちろんこれらが売上のベースにあることは間違いないです。ですがこれらは過去のナンバリングでも同じです。モンスターハンターライズだって同じ努力がされていたはずです。アイスボーンだってそうです。ではなぜ、ワイルズが他のナンバリングと違う売上が作れたのでしょうか。私は過去作品を全部履修済み、体験済みで今回のワイルズも体験済みだからこそわかることがあります。
モンスターハンターワイルズが他のナンバリングと大きく違うところがある。それは「初心者が離脱しそうな点をことごとく排除した」こと。例えばモンハンプレイヤーには馴染み深い言葉がある。「はちみつください」。これ、今作、はちみつや鉄鉱石などの収集がとにかく簡略化されている。もちろん最低限、集めるには操作が必要だ。小さなストレスはあるものの、初心者が離脱するほどのストレスではない。
初心者が離脱しそうな点はまだまだある。これは今作からではないが、ペイントボールがいらなくなった。ペイントボールとは、モンスターにマーキングをつけるもので、モンスターが逃げたときにどこに逃げたか追いかけるために必要なアイテムであり行動である。モンスターにペイントボールを当てるのは当然だと古参ハンターは思っているし、その作業を怠ったあとのストレスを知っているから忘れずにやるが、初心者は「モンスターにペイントボールを当て忘れたときの、モンスターがマップ移動をしたあとの追いかけるストレスの大きさ」で耐えられなくなってコントローラーやゲーム機そのものを投げつけることが全国で多発していた。今はこのストレスがない。マップをみればモンスターがどこにいるかわかる。なんなら、ワイルズは自動で追いかけてくれる。なんと便利な狩り生活。
初心者が離脱しそうな点はまだまだまだある。モンハンといえばお料理。クエスト前に料理を食べるとHPとスタミナが1.5倍ほど伸びる。正しくは「50」という数値分伸びる。初期値が100なので1.5倍。これの有無でクエスト攻略の快適度が大きく変わってくる。従来のモンハンはクエストに行く前に毎回料理を注文して食べる必要があった。スキップを使うと時間にして2秒か3秒。席につく動作などを考えたらもう少し長いかもしれない。今作はなんとデフォルトで30分。なんと!30分!一度食べたら30分!効果が継続!しかも!クエスト中にも料理を作って食べることができる!ソロキャンプみたいに料理を作れる!食べ忘れても安心。なんという親切設計。心折設計が親切設計に。こういう料理も古参ハンターからしたら当然の流れ。だが初心者は食べることすらしない。結果、クエストが難しくてクリアできなくて投げ出す。
初心者が離脱しそうな点はまだまだまだまだある。ワイルズは武器や防具を作るための素材集めがだいぶゆるくなった。簡略化されている。というのも、モンスターを攻撃して部位破壊するたびに素材がポロポロ落ちる。剥ぎ取りやクエスト報酬はいつもと変わらないが、よくわからないがポロポロ手に入る。ポロポロという表現がとても似合うほど手に入る。今まではモンスターの防具装備一式作るには15分ほどかけたクエストを5回、10回。剥ぎ取り確率3%の報酬が手に入らなくて20回、30回挑むこともあった。今作はそんなに挑まなくてもポロッと手に入る。古参ハンターは1つのモンスターを100回討伐することは当然だと考えているが、初心者ハンターからしたら5回討伐することも苦痛なのだ。モンスターハンターなのでモンスターを倒すことが目的のゲームなのだが、目的の装備を作るために必要な討伐数がだいぶ緩和されていて、正直やることがない。が、それが初心者離脱ポイントを大きく軽減して、これが体験版からのユーザーが納得してフルプライスを支払った原因の1つになっているのではないかなと考えてる。
初心者が離脱しそうな(ryまだまだある。ソロでも楽しい。「オンラインで他人に迷惑をかけたくないプレイヤー」は一定数いる。今作、ソロでもNPCといっしょにマルチプレイができる。そしてNPCがそこそこ強い。ハンマーならしっかりスタンをとってくれる。罠もおいてくれる。捕獲まではしてくれないが、しっかりと「マルチプレイ」をしてくれる。”ぼったち”状態のNPCは一人もいない。
初心者が(ryまだまだある。砥石や通常弾や貫通弾といった、忘れたままクエストに出発したときのストレスが軽減された。モンスター討伐に最低限必要な道具は常に持っている。常備菜のようにハンターのポケットに入っている。便利だ・・・。
初心(ryまだまだある。これはマルチプレイ限定になるが、弓の地雷が減った。弓は本来、ボタンを長押ししてためてから放つことで高ダメージを与えられる武器。途中から剛射と呼ばれる操作が追加されたがここでは割愛する。ためないとカスみたいなダメージを与えるだけ。唯一許されるのはグラビモス相手に水属性の高い拡散弓を担いだときだけ。ソロで遊ぶぶんには問題ない。見ず知らずの狩人の討伐時間が長くなることは全く問題ない。ただ、オンラインで弓を担いできた狩人が、あきらかに貯めずにパスパスと矢を放っていたときの光景を目の当たりにしたときのストレスはとてつもない。しかし今作、なんと弓は貯めなくてよくなった。連打すれば勝手に貯まる。最低限のダメージが出てるならマルチで弓をみてもニッコリ。
このような、ゲーム内で感じる小さなストレスがことごとく排除されている。だから体験版から製品版を購入する層が多かった、のではないかなというシナリオを私は考えている。もちろん800万本を販売するにはその数字以上に体験版がダウンロードされていることが必須で、その体験版をダウンロードして遊んでもらうための仕掛けや認知活動などはまた別になってくるのだが、本来離脱するはずだった多くの初心者が納得してフルプライスの製品版を購入している点に注目したい。今回のワイルズで初心者ハンターが増えたら、未来のモンハンの売上もだいぶ明るくなる。これは古参ファンとしても嬉しい。
重要な点は、「小さなストレスを徹底的に排除して、初心者が参入しやすくなった点」。
近年のカプコンはこれがとても上手で、ストリートファイター6も同じように、モダンという操作方法を追加することで初心者でもじゅうぶん戦えるように設計されたことで初心者をたくさん取り込み、下火傾向だった格ゲーの世界でも大ヒットした。格ゲーとシューティングの世界は、20年近く「初心者お断り」の空気が漂っていた。開発はどう感じてたかわからないがゲームセンターに通っていた身としてはそのような会話が多かった。
初心者。見込み客。彼らをいかに取り込み、逃さないか。
私達のビジネスでも見込み客をどう取り込むか。マーケティングの世界では永遠のテーマでもあると私は考えています。
私はこんな目線で、今回のモンスターハンターワイルズを楽しんでいます。